確認日:2026年10月21日
この記事は、冬に車で出かける一般家庭の方に向けて、雪が降る前に確かめておきたい規制とタイヤ・チェーンの備えをまとめたものです。「オールシーズンタイヤだから冬の道も走れる」「布製チェーンを積んでおけば大雪でも大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、必要な装備は、道路の規制、路面の状態、製品の適合条件によって変わります。規制上の通行条件を満たすことと、安全に走れることは別だと考えて備えましょう。
まず区別したい、二つの規制
冬の高速道路で確認したい代表的な規制が「冬用タイヤ規制」と「チェーン規制」です。ただし、雪道の交通規制はこの二つだけではありません。速度規制や通行止めなどもあるため、現地の表示と道路管理者の最新情報を確認する必要があります。
NEXCO西日本は、冬用タイヤ規制の際、冬用タイヤまたはタイヤチェーンなどの滑り止め装置がない車は走れないと説明しています。必要な装置は都道府県によって異なるという注意書きもあります。[1]
一方、国土交通省(以下、国交省)が説明するチェーン規制は、大雪特別警報などが出るような異例の降雪時に実施されます。チェーンなしでは対象区間を通れない規制です。スタッドレスタイヤ(雪道・凍結路向けの冬用タイヤ)を装着していても、4WD車(四輪駆動車)でも対象になります。車内に積んでいるだけでは足りず、装着が必要です。[2]
規制の名称が似ていても、タイヤだけで通れる場合と、チェーンの追加装着が必要な場合があります。出発前に調べた情報だけでなく、走行中の道路情報板や案内も確認してください。
対象区間以外でも、備えは必要
国交省の公表一覧には、国道112号の月山道路、国道138号の山中湖・須走、中央道の須玉IC~長坂ICなど、直轄国道6区間と高速道路7区間が掲載されています。急な上り下りがある峠などのうち、過去に雪による立ち往生や通行止めが起き、チェーンの着脱場所や通行止めの解除まで待機できる場所がある区間です。[2]
これは、掲載区間で常時チェーンが必要という意味でも、それ以外では冬装備が不要という意味でもありません。実施の有無や範囲は、その日の発表で確認します。通行止めになれば、チェーンを装着していても進めません。
オールシーズンタイヤは、マークと製品情報を確認
JAFは、側面に「スノーフレークマーク」が付いたタイヤは、高速道路の冬用タイヤ規制時も走行可能と説明しています。NEXCO西日本も、オールシーズンタイヤは同マークがある物を全車輪に装着するよう案内しています。[1・3]
ただし、これを「全国のすべての規制・路面で無条件に通れる」と読み替えることはできません。ダンロップの製品別適合表には、エリアによってはオールシーズンタイヤで冬用タイヤ規制時に走れない場合があり、道路管理者へ確認するよう注意書きがあります。マーク、残り溝、装着状態に加え、走行する地域の扱いも確かめましょう。[4]
「M+S」という表示だけを、スノーフレークマークと同じ根拠にすることも避けます。購入時は「オールシーズン」という名前だけで判断せず、メーカーの規制対応表示を確認してください。なお、チェーン規制(JAFの説明では「全車チェーン装着規制」)では、スノーフレークマーク付きでもチェーンが必要です。[3]
雪上性能と氷上性能は同じではない
オールシーズンタイヤの性能は、製品によって異なります。日本自動車タイヤ協会(JATMA)も、どの性能を重視しているかは商品ごとに違うため、メーカーの情報を確認して選ぶよう案内しています。[5]
例えば、ダンロップの「SYNCHRO WEATHER」は、公式適合表で氷上路面にも対応するとしています。一方、同じ表にある「ALL SEASON MAXX AS1」は氷上路面を不可としています。また、前者についても、過酷な積雪・凍結路面では同社のプレミアムスタッドレスタイヤを推奨しています。いずれも製品例で、全製品に一般化できません。[4]
「オールシーズンは凍結路でも必ず走れる」「すべて凍結路では使えない」のどちらとも決めつけず、手元の製品の説明を確認することが大切です。マークがあっても制動距離や走行性能を保証するものではありません。出かけない判断も含めて考えましょう。
布製タイヤチェーンは、国交省の説明に含まれる
国交省のチェーン規制Q&Aは、タイヤチェーンの種類として、金属製、ウレタン・ゴム製に加え、「布製カバータイプ」を挙げています。布製だから一律に対象外、という扱いではありません。一方、薬剤を吹き付けるスプレー式では、チェーン規制中の区間を通れないと明記されています。[2]
ただし、布状の物なら何でもよいわけではありません。車両とタイヤサイズに適合した製品を選び、確実に取り付けることが前提です。装着位置は駆動輪(エンジンやモーターの力が伝わり、車を進ませる車輪)が基本ですが、車両メーカーが指定する場合もあるため、車と製品の説明書を確認します。[2・5]
製品例の「AutoSock(オートソック)」は、公式案内で一般的な乗用車の推奨速度を時速50km以下としています。これは、その速度ならどの雪道でも安全という意味ではありません。道路の規制速度や路面状況に応じ、さらに速度を落とす必要があります。[6]
同社は、雪道・凍結路のみで使用し、乾燥した路面に出たら安全な場所で早めに外すよう案内しています。乾燥路は摩耗が進みやすいためです。公式案内に試験での走行距離が示されていても、実際の寿命の保証として読み替えないようにしましょう。[6]
装着しやすさも、車の形状や作業環境で変わります。降雪のない日に説明書を読み、試し装着をしておくと、サイズ違いや取り付けにくさを事前に見つけられます。道路上で慌てて作業しないよう、着脱場所も調べておきましょう。
大雪への備えは、タイヤ以外にも
大雪が予想されるときは、不要不急の移動を控えることも大切です。出発する場合は、気象情報と道路管理者の規制情報を確認し、移動を中止・延期する条件を家族で決めておきましょう。
車には、防寒着、毛布、除雪用スコップなどを準備します。待機に備え、水や食料、携帯トイレ、照明、充電手段も家族の人数に合わせて考えてください。燃料や充電残量にも余裕を持たせます。
立ち往生時に特に注意したいのが、一酸化炭素中毒です。雪で排気口付近がふさがると、排気ガスが車内に入り、命に関わるおそれがあります。JAFは、降雪時に車内にとどまる際はできるだけエンジンを切り、マフラー周辺の定期的な除雪が重要だと説明しています。[7]
ただし、除雪をすれば安全が保証されるわけではなく、吹雪の中で無理に車外へ出ることも危険です。窓を少し開けたり、内気循環にしたりするだけで安心せず、救援機関や道路管理者の指示に従ってください。体調に異変があれば、救援を求めましょう。
雪が降る前に、溝とチェーンを点検する
JATMAは、積雪路・凍結路では冬用タイヤの残り溝が新品時の50%以上あることを確認し、50%未満なら冬用として使わないよう案内しています。プラットホーム(溝の深さが新品時の50%になると露出する、冬用タイヤとしての使用限度の目印)があるタイヤは、その露出を確認します。[5・8]
これは、残り溝1.6mmで現れる「スリップサイン」とは別の目印です。一般的な使用限度まで溝が残っていても、冬用としての限度に達している場合があります。[8]
雪が降る前の点検は、次の順で進めると漏れを防ぎやすくなります。
- タイヤ側面のスノーフレークマークの有無と、メーカーの規制対応表示を確かめる。
- プラットホームが露出していないかを見て、冬用としての残り溝を確かめる。
- 空気圧、ひび割れ、偏摩耗を点検する。判断が難しければ販売店などに相談する。[8]
- チェーン本体に傷みがないか、車のタイヤサイズに適合しているかを確かめる。
- チェーンの説明書と手袋を、チェーンと一緒に車に積む。
大切なのは、道具の名前だけで判断せず、その日の規制と路面、自分の装備に合わせて行動を変えることです。
出典
- [1]NEXCO西日本「冬用タイヤ」:全輪装着、冬用タイヤ規制とチェーン規制、地域差。 https://www.w-nexco.co.jp/safety_drive/snow/tire.html
- [2]国土交通省「チェーン規制について」Q1~Q6・掲載区間一覧:大雪時、4WD・スタッドレスの扱い、布製、スプレー式除外。 https://www.mlit.go.jp/road/bosai/fuyumichi/tirechains.html
- [3]JAF「『オールシーズンタイヤ』って、どんなタイヤですか?」(2024年5月現在の説明):マーク付きの冬用タイヤ規制対応、全車チェーン規制。 https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-supplies/faq090
- [4]ダンロップ「SYNCHRO WEATHER 路面適合表」:製品ごとの氷上性能、規制上の地域差の注意、摩耗50%、過酷な積雪・凍結路の推奨装備。 https://tyre.dunlop.co.jp/special/synchroweather/roadsurfacecompatibility/
- [5]JATMA「冬道走行とタイヤ」:冬用残り溝50%、装着位置、オールシーズンの製品差、防滑措置の都道府県別規則。 https://www.jatma.or.jp/tyre_user/winterroaddrivingandtyres.html
- [6]AutoSock日本公式「布製タイヤチェーンの耐久性・寿命は?走行可能距離や推奨運転速度を解説」:適合サイズ、速度、乾燥路、保管等。 https://autosock.jp/blogs/textile-tire-chains/durability
- [7]JAF「クルマが雪で埋まってしまったときの注意点は?」:排気ガス、窓開けや内気循環の限界、エンジン停止、除雪、防寒用品。 https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-natural/subcategory-snow/faq255
- [8]日本グッドイヤー「タイヤの点検」:1.6mmのスリップサイン、50%のプラットホーム、空気圧・外傷等。 https://www.goodyear.co.jp/knowledge/check.html