確認日:2026年10月21日

この記事は、災害時に自宅で過ごすことを考えている一般家庭の方に向けて、在宅避難を選ぶ前の確認点と平時の備えをまとめたものです。災害が起きたら、必ず避難所に行かなければならないのでしょうか。自宅と周囲の安全が確保され、生活を続けられるなら、自宅で避難生活を送る「在宅避難」も選択肢です。ただし、「家が残っている」「食料がある」という理由だけでは決められません。危険から逃れる判断と、その後の暮らしの準備を分けて考えましょう。

在宅避難は「避難しないこと」ではない

内閣府の「避難情報のポイント」は、避難を「難を避けること、つまり安全を確保すること」と説明しています。安全な場所にいる人まで、避難場所へ移動する必要はないという考え方です。避難先には、指定された場所のほか、安全な親戚・知人宅などもあります。[1・2]

一方、地震後の在宅避難は、安全な自宅で生活を続ける方法です。横浜市神奈川区は、自宅に倒壊や焼損の危険性がない場合の選択肢として紹介しています。「避難所が混んでいるから危険でも家に残る」という意味ではありません。家族の健康や生活条件が変われば、避難先も見直すことが大切です。[3]

自宅で過ごせるか、三つの視点で確認する

1.地域にどんな危険があるか

まず、国土交通省のハザードマップポータルサイトと自治体のハザードマップで、自宅周辺の洪水、土砂災害、高潮、津波などのリスクを確認します。ポータルには、災害情報を重ねて見る「重ねるハザードマップ」と、自治体の地図を探す「わがまちハザードマップ」があります。[4]

色が付いていない場所も、安全が保証されているわけではありません。データの未整備や反映までの時間差もあります。近くの崖や低い土地、避難先までの経路も確認し、災害時は自治体の避難情報などを合わせて判断してください。

洪水時に自宅にとどまる「屋内安全確保」について、首相官邸は三つの条件を示しています。家屋倒壊等氾濫想定区域(洪水により家が倒れたり崩れたりするおそれがある区域)に入っていないこと、浸水する深さよりも高いところに部屋があること、水が引くまで我慢でき、水・食料などの備えが十分にあること、の三つです。[2]

これは洪水を想定した条件であり、地震、津波、土砂災害にもそのまま使える共通の安全基準ではありません。「上の階なら大丈夫」と決めず、災害の種類に応じた避難行動を確認しましょう。危険な場所では、移動が難しくなる前の避難が基本です。

2.建物と室内に危険がないか

地震後は、建物の被害や周囲の火災、家具の転倒などを確認します。明らかな損傷や危険がある建物にはとどまらず、自治体などの案内に従って安全な場所へ移動してください。外から見ただけで専門的な安全判定ができるわけではありません。

平時には、家具の固定や寝室の整理、出口をふさがない収納を進めておきましょう。備蓄が十分でも、倒れた家具で取り出せなければ使えません。よく使う物を取り出しやすい場所に分けて置くことも、家で生活を続ける準備になります。[3]

3.家族が生活を続けられるか

停電中に必要な医療機器を使えるか、薬や食事、介助を確保できるかも判断材料です。乳幼児、高齢者、食物アレルギーがある人などは、家族共通の備蓄だけで足りるとは限りません。必要な食品を普段から確認し、医療や介助が関わる場合は関係者と事前に相談しておきましょう。[5]

在宅避難を始めても、暑さ・寒さや体調の変化によって継続が難しくなることがあります。家に残ることを目標にせず、支援につながることまで含めて準備するのがポイントです。

集合住宅と戸建てで異なる備え

集合住宅では、停電でエレベーターや給水設備が止まった場合の生活を考えます。階段で水や物資を運べるか、支援が必要な住民への連絡方法はあるか、管理組合・管理会社と確認しておきましょう。

特に注意したいのが排水です。地震で見えない場所の配管が傷んでいると、上階から流した水や汚水が下階に漏れたり、あふれたりするおそれがあります。横浜市神奈川区は、管理会社による点検が終わるまで排水しないよう案内しています。断水が解消しても、排水まで使えるとは限りません。[3]

戸建てでも、下水管などが傷んでいれば水洗トイレは使えません。自宅の設備と周辺の復旧状況を確認し、どちらの住まいでも水を流さずに使える携帯トイレを備えておきましょう。

必要な回数の目安や使い方は、簡易トイレの記事で詳しく紹介しています。

食品は最低3日分から1週間分を目安に

農林水産省は、食品の家庭備蓄について「最低3日分~1週間分×人数分」が望ましいと説明しています。地域の状況に応じて、2週間分など多めに備えることも大切としています。これは食品の備蓄量の目安であり、3日後に支援が必ず届くという意味ではありません。[6]

横浜市神奈川区の家庭向け案内では、食料や生活用品など必要な物を「最低3日分(できれば1週間分)」備えるとしています。記事やチェックリストで日数を見かけたときは、何を対象にした目安かも確認しましょう。[3]

水は、農林水産省の目安では飲料水と調理用水を合わせて1人1日3リットルです。4人で7日分なら84リットルになります。ただし、湯せんや食品・食器を洗う水は別途必要です。家族の状況に応じて調整し、飲める水と生活用の水を区別して保管してください。[7]

一度にすべてを買いそろえる必要はありません。普段食べる食品を少し多めに買い、期限の近い物から使い、使った分を補充する「ローリングストック」なら続けやすくなります。常温で保存でき、加熱せずに食べられる物も組み合わせましょう。[5・6]

食品だけでなく、携帯トイレ、トイレットペーパー、衛生用品、照明、通信機器の充電手段も点検します。家族で「水も電気も使えない夕食」「水を流さないトイレ」を一度想像すると、足りない物を見つけやすくなります。道具は購入だけで終わらせず、説明書を読み、使えるか確認しておきましょう。

家にいても、避難所や自治体とつながる

在宅避難は、支援を受けずにすべて自分たちで解決することではありません。例えば横浜市神奈川区の案内では、大きな地震のときの避難先を「地域防災拠点」としています。在宅避難者も、拠点で「避難者カード」を提出して登録すると、後日、物資を受け取れます。被害状況などの地域の情報も拠点に集まります。[3]

ただし、受取場所や登録方法は自治体で異なり、必要な物資をすぐにもらえるとは限りません。基本的に取りに行く運用の地域もあるため、移動が難しい場合の相談先も確認してください。

今日からできる準備の順番

準備は、次の順で進めると取りかかりやすくなります。

  1. ハザードマップで、自宅周辺の災害リスクと避難先までの経路を調べる。[4]
  2. 家族の人数と事情(薬、アレルギー、介助など)から、食品・水・携帯トイレの必要量を数える。
  3. 住んでいる自治体の在宅避難者向けの登録方法と、物資・情報の受け取り窓口を控える。
  4. 在宅避難を続けられなくなった場合の避難先を、家族で決めておく。

避難先を複数考えておけば、状況に応じて選択を変えやすくなります。

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出典